飯塚見聞

母の故郷は福岡県飯塚市。昔炭鉱で栄えた遠賀川沿いの町です。

町中から見えるボタ山は木が生えて三角型の山になってました。

既に亡くなった私の母の兄妹で一人だけ存命している叔母を訪ねて、飯塚に行ってきました。

叔母は93歳、二人で暮らす軽度の認知症の叔父は92歳。昨年の秋まで住んだ千葉県の自宅、

次いで入居した川崎市の介護付き有料老人ホーム、そして新しく入居した故郷、飯塚の有料老人

ホームと高齢にも関わらず、自分に合った住まいを模索する叔母夫婦の二人だけの暮らしをつぶさに

見て感じるもの多々でしたが、その他にも飯塚は面白かった。

 

大変に食文化が豊か。それは以前に今も飯塚に暮らす従妹を訪ねた時、ご馳走になった料理屋の食事

を見て感じたことでしたが、今回は改めてその思いを強くしました。

最初の日に従妹が4人で食べようと持ってきてくれたお弁当。 白い山茶花と濃いピンクの桃の花が・・・・・。

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蓋を開けたらまず季節の花が・・・。なんと粋ではないですか。

そして次の日のお昼に「あんたに食べさせたいから」と持参してきてくれたのがこのお寿司。

なに? この寿司ネタ! 大きいぃー!

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大きすぎて噛み切れないことを予測して包丁が入っている。

なんでこんなに贅沢かというと、従妹によれば炭鉱夫の力仕事を支えるために食の文化が発達

したのだそうで、海が遠いこの土地では寿司屋も料理屋も「生け簀を持つとるとばい」。

 

さすがにもう暫くはお寿司はいい、というくらいに堪能しました。

じゃあ、飯塚は豊かな町かというとそうは感じられない。一口では語れない、炭鉱という特殊な歴史

を思わせる町という印象です。

 

私が泊まったホテルの1階にある焼きたてパン屋さんで、二日間に亘って朝お会いした89歳の先生。

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焼きたてパン屋さんは朝7時から夜7時までの12時間営業。 パンを買った人はカップを1個もらって

タダでコーヒーを飲めます。

店内の横1列に5列ほど並んだ長ーいテーブルには、たぶん毎朝ここで顔を合わせる常連客が

毎朝同じ席でパンを食べながらタダのコーヒーを何杯も飲んで、四方山話をする、というような

場所らしい。 ちょうどヨーロッパの街の茶店で、退職した時間のある老人たちが陽気に話しながら

時間を潰す、というような。

こちらの紳士は英語の経済紙を読んでおられました。戦後シベリアに抑留されていた英語の先生。

隣に座って先生に質問してはその返事を熱心に聞き、また質問するのは、退職された元自衛官。

前の席に座ってコーヒーを飲みながらお2人の話を聞くだけでも面白かった。ついにがまんできなくなって

私もお話の仲間入り。

 

先生によればこのパン屋さんには、毎朝決まってくる人が決まった席で新聞を読んだり、話をしたりしに

くるんだそうです。人生がたくさん集まった場所なんだ。

元自衛官氏はそんなに飲んでもいいの?と私が心配になるくらい何杯もおかわりしてましたが、私も

ずうずうしくも3杯飲みました。

また初夏の頃には飯塚に行きます。89歳の先生にまたパン屋さんでお目にかかりたいと思います。

お元気でいてほしい。