またもやの北海道(帯広)

野付半島に入ってみるとけっこう距離が長い。

ここも来るのは2度目だけれど、こんなに距離が長かったか。

ところどころで目に入る『ナラワラP』の立て札。これがなんなのかさっぱり
思い浮かばず、見事にかつて来た野付半島を忘れ果てている。

細くなったり広くなったりする道路を車止めのある終点まで。ここから先は
30分ほどの歩きでトドワラ地帯まで行けるらしいけれど、先の工程が長い
今回は断念。

終点の駐車場に車を置き、辺りの風景を見渡したところで
「あ、シカ!」とSちゃんの声。
そこにあるのはシカの姿ではなくてシカの角。草むらから黒い小枝のように
何本も突き出ているのは雄ジカの角なのです。
周りにもたくさんいる鹿も重そうで立派な角をつけた雄ジカです。

ここに来て「ナラワラP」が何かが判明。
この野付半島というところは、海水に侵食された樹木が立ち枯れて白骨化
したような木々が立ち並ぶ風景が有名なのだけれど、「ナラワラ」がミズナラ、
「トドワラ」がトドマツが海水に侵食されたところだとわかりました。

侵食は今も進んでいるために、中央を走る道路の両側には白く立ち枯れた
木々や塩を吹いたような白い干潟や湿地などの不思議な光景が見られます。

そしてこんなところにも少ない地面にしがみつくように咲くハマナス。

全長26キロメーターに及ぶ日本一長い砂嘴であるこの野付半島を、私は
白骨のような木々を観光資源にしているところかと思っていたけど、
そうではなくて明治の初めから開拓、開発された古くからの歴史がある
半島なのだと今回知りました。

野付半島ネイチャーセンターに行けば、この半島独自の動物や植物などの
さまざまな展示とともに、野付半島の歴史が説明されています。

私が驚いたのは、この地またはこの地以外の土地でたくさんのこどもを
取り上げた助産婦さんの歴史、そして紹介展示。
厳しい環境の開拓地で、自らも多人数の子を産み育てながら、国を護る拓く
源であるこどもたちの出産を手助けする助産婦や保健婦を職業とする女性
たちが、こんなにもたくさんいたのかと、ひとりひとりの写真を見ながら
その業績の偉大さに頭が下がりました

旅先の土地で地域文化の展示はよく見ることがあるけれど、お産婆さんの
歴史の展示というのは初めてで、そういう企画そのものにおおいに感動
しました。




野付半島を出て、別海町、標津町、中標津町などを通り抜けながら目に
入ってくるのは、いかにも北海道らしい広大な牧場や定規で仕切ったような
畑が広がる大農業地帯。遠くに連なる防風林。



この北海道の農地で見かける防風林は前から気になっていたのだけれど、
中標津町に入って、330度(30度は山)の角度でこの農業地帯と地平線を
眺望できるという開陽台に立ち寄ったら、そこの看板に書いてありました。

格子状防風林。北海道自然遺産。
明治の開拓時に農地や人々の生活をまもるために180m幅の林帯を3300m
間隔で配置したもので、木の種類はカラマツ、トドマツ、雑木。
農地を風や雪から護り、もちろん人の暮らしや道路も護るという重要な
役割を持った防風林で提唱したのは開拓顧問のケプラーさん。

しかし遠くから見るとわからないけど、幅が180mもある林帯は野生動物の
棲家や移道路にもなり生態系保持にも役立っている、と読んで、大変に納得
しました。


格子状防風林は大きすぎて空からしか見られない景観だとのことで、
その片鱗を中標津町の開陽台展望台から望めます。

「あ、アリみたい」
望遠鏡を覗いたSちゃんの言葉の先に見えるのは、広大な牧草地にツブツブ
小さく見える乳牛。ゴロゴロしてます。


展望台の2階カフェの看板メニューは地元特産の蜂蜜ソフトクリーム。
ソフトクリームの蜂蜜を食べてしまったら、牛の帽子を被ったおじさま
スタッフが奥から出てきて、大サービスで再度蜂蜜をかけてくれます。





次に立ち寄るのは阿寒湖。
ここではカムイコタンに行ってみたい。
と思って寄ったのですが、残念ながら、「アイヌの古式舞踊」や「コタンの
人々が演じる人形劇」などが見られるアイヌシアターはお休み中。


というより、北海道では観光名所の阿寒湖もほんとに人が少なくて、
アイヌ芸術の木彫品やお守りなどが並ぶ民芸品のお店にも人影がなく、
観光客として申し訳ないような気さえします。


ひとつふたつお店に入って、アイヌ模様のマスクとコロボックルを買いました。
お店の方から紹介されて、阿寒温泉の宿「鶴雅」に行き、静かで重厚な
ギャラリーで、阿寒湖畔に住みつき、たくさんの作品を遺された瀧口政満氏
の心洗われるような彫刻に出会わせてもらいました。

このお店の店主さんは未だ熊を見たことがないのだそう。
この私が家の近所で4匹もツキノワグマと出会ったのに、ヒグマはよほど
用心深くて森の奥から出て来ないのかしら。

阿寒湖に来たはずが、結局阿寒湖は見ずじまい。
後で気付けば鶴雅は阿寒湖畔の宿。ちょっと外に出て歩けば湖畔に出られた
ものを、まったく気付かず惜しいことをしました。


もうひとつ瀧口政満氏2代目のお店が民芸品店の中にあったのに、それも
気付かなかった。
いずれにしろ、アイヌコタンは一晩泊まってゆっくり歩いて、アイヌ文化に
触れ、楽しみたいところでした。また来たい。




寄り道は阿寒湖を最後にして一路帯広へ。
最後の夜は帯広泊まりです。

ずいぶん長い道のりを走って帯広に入り、いったんホテルで休んでから、
いざ夕食に夜の街へ。帯広の夜はもうこれで4度目。

休んでいるところも多くなかなかよい呑み食い処を見つけられずにウロウロ
歩いてやっぱり最後は居酒屋へ。

入るとなんと入り口で検温。
居酒屋で検温は初めてで、まったく大変なことです。コロナは。
店内はカウンター席と仕切られた客席がいくつか。案内されたのは
カウンターでカウンターの中は女将さんらしき女性。

入店者があるたびにカウンターの中から手を伸ばしてまずは検温、次は
お酒を作ったり料理を出したり、そしてまたお客さんに検温。

ひとりの客が帰ると、スタッフが座席の裏表からカウンターの隅々まで
消毒液で拭きます。釣られて私も臨席のお客が気になってきます。
お酒を飲んで、料理を食べてはいるものの、その感染防止の緊迫感で
何を食べたのかどんな味だったか、記憶にございません。



最後の1日は十勝のガーデンを訪ねます。






またもやの北海道(羅臼ー熊との共存)

北海道の話からちょっと外れますが、
昨日、歯医者に向かう途中、農協をちょっと過ぎた辺りで、黒い生き物が
2匹田んぼ側の藪から出てくるのを発見。なんと、これが仔熊!

春仔というのか、まだ危険もなにも知らないちっちゃな仔熊で、停めた私の
車の周りで、あっちにいったりこっちにいったり道路で遊んだり、なんとも
可愛らしい。

母熊が近くにいるはずだから車外には出られないけど、集落内のことでさて
どうしようと思案。作物を食べられたとか畑に足跡を見たとかだったら
見過ごすけれど、怪我人が出ては困るので、友達の農家の由美さんに
「仔熊がいるからなんとかして」と連絡して歯医者に急ぎました。

そしてまた今日の昼時、帰宅途中でもうちょっと大きい熊に遭遇。
今度は危険を学んでいるようですぐに森に入っていきました。
またもや思案。騒ぎたくないなあ。熊の親子が死ぬのも嫌だし、人が怪我
するのも嫌だ。今までに怪我した人をふたりも見てるから殊更そう思います。


ウトロの居酒屋で見た「あなたとヒグマの共存のために」という冊子を
思い出しました。
ヒグマが生息する北海道では、根底にその思想があってのヒグマとの
付き合いだろうけど、この地域にいる熊との付き合いは生活圏が重なり
過ぎて難しい。
親子が森に戻ってくれるのを祈るばかりです。




さて4日目の北海道。

旅の間は改めての朝食はありません。

朝は北海道の地元コンビニ、セイコーマートで熱々の大きなお握り(塩鯖や
塩鮭など北海道の美味いもの入り)やちくわパンなど買って車中食。

北海道に来始めた頃は、セブンイレブンやファミマに寄っていたけれど、
今ではすっかりオリジナル食品を作って頑張るセイコーマートファンです。


世界自然遺産である知床峠を越えて小1時間で半島の反対側の羅臼へ。
ウトロや羅臼はこれまで見た富良野や美瑛などとは全く違う、また他の
面での北海道の感じさせられる土地柄です。


羅臼に到着するや否やN君はメイン道路(海辺にそう道路)をもうこれ以上は
道がないというどん詰まりの相泊地域までまっしぐら。何かと思えばもう
5年越しに入りたいと思っていた日本最東端の相泊温泉に入りたいのだそう。

空は灰色、空との間も見えない海も霧が巻く灰色で、晴れていれば見える筈の
北方の島国後島も船の影もまったく見えません。

道沿いの家々は、道路から一段低く浜に建てられた番屋で、家屋の際まで
引き上げられた船をところどころで見かけます。海は近く波が洗い。
ここは漁師の仕事場。冬を見たわけではないけれど、季節をとおしての暮らしや
仕事の厳しさを感じさせらる佇まいです。


もうこれ以上先には行けない相泊地域。この先はヒグマが住む場所。


相泊温泉の立派な看板がありました。

そして温泉は、というと、、、。

えー!
この温泉、どんなことになっているの。
女の人も入れるのか。脱衣場の期待はしないけど、せっかくここまで来た
のだから、いざ、まあ、とにかく、、。

この蛸壺のような丸い石はなんだろう。足場が悪いし降りにくい。
加えて波しぶきを被りそうに波が洗い。

温泉は男用、女用に板で仕切られていました。夏場だけらしい。当然脱衣場
はなし。


大変率直な相泊流入浴心得。

男湯からは、念願のお湯に入れたN君の歓喜の悲鳴が聞こえてくるけど、
しかしこのお湯もの凄く暑い。5秒と足を浸けていられない。
ほんとに不思議。こんなに寒い土地で波打ち際からすぐのところになんで
こんなに暑いお湯が沸くのでしょうか。

女ふたりは熱過ぎるお湯に足先だけを浸けては出し浸けては出しして温泉
気分を味わいました。

ここに来るまではN君の執着を笑っていたけど、いやあ、もうこれは病みつきに
なりそう。行けるものなら最南端も最北端も入ってみたくなりました。



羅臼の町に戻って純くんの番屋(ドラマ北の国からの純君)で食事をと
思ったら、残念ながらお休み。今だけなのかこのコロナの状況でずーっと
お休みなのかわかりません。



ちょっと倒れそうに傾いだ純くんの食堂。
中はきれいです。

羅臼の道の駅は風や雪に大丈夫なようにこんなふうになっていました。

カニだの昆布だのの海産物を売っている店内はかなり広い。

羅臼を出てお昼に食べた蕎麦や丼はホタテが満載。


食事をする度に思うのですが、入る店入る店、客と客との間が仕切られていて
一度も3蜜の不安を感じませんでした。

午後は野付半島へと向かいます。