被災証明

             明日6月19日で高速自動車道の交通料、土、日、1000円が廃止され、20日

      からは、東関東大震災の被災者を対象に東北地方の自動車道が無料化され

      る。沿岸部の津波被災者が対象者だと思い込んでいたが、私たち内陸部の被

      災者もその対象であることがわかった。

      被災したとはいっても、寝るところもあり、仕事もできるのだから、被災証明の申

      請については考えたことがなかった。「被災証明の発行は各自治体の判断で」と

      いうことであるから自治体によって発行基準が違う。岩手や盛岡は全戸を対象

      に発行。宮城県は不動産、動産に被災があった者ということで、我が家もその

      対象になる。高速料がタダになるというのは客観的に見れば結構な話だけ

      れど気持ちはすっきりしない。我が家から北へ向かえば岩手や秋田、自分たち

      とはさほど変わらぬ被災地で、海の方向へ向かえば沿岸被災地に突入、西、つ

      まり東京方向へ向かえば福島へ行くのだから、休日だからと言ってどこかへ

      行こうという気にはまずならない。被災者の方にとって高速道を無料で必要

      な場所に行き来できるということはそれはそれで大事なことなのだけれど、それ

      と同時に、元気になろうとさまざまな復興計画を立てている沿岸部の町々に

      県外からの人の足が向かなくなるようなことがあったら、それは大問題だ。

      今の時期、東北地方にはたくさんの人々に来てもらわなければならない。

      3月11日の震災後、道の駅で観光バスを見たことがない。ようやく乗用車の

      お客様が増えたように感じられるこの時期に、またお客様が来なくなるのでは

      道の駅にとっても隣町の鳴子温泉にとっても大打撃だ。

      

      ともあれ、車が足代わりのこの住環境ではいくらどこにも行かないとは言っても

      高速道に乗らねばならない時もある。普通高速料金を払う余裕はないから、

      壊れたポンプ、傾いた作業小屋、床下の大穴、ついでに9割方割れて小さな

      ダンボール1箱分に収まってしまった食器など、諸々の写真を撮って役所に

      持って行くしかないかなあ、と自問自答する。それにしても東北一体のほとんど

      の住民に中型以上のトラックまで無料にして国の財政大丈夫なんだろうか。

      

                                      山の手S記