富良野訪問ー3-

2009年以来7年ぶりの再演となる富良野GROUP「屋根」2016冬が上演されるのは、新プリンスホテル界隈に

ほどちかい富良野演劇工場。

演劇を作り出す工場というこの素敵な名前の劇場は、平成12年にオープンした全国初の公設民営劇場であり、

NPO法人「ふらの演劇工房」で受託運営されているということです。

観る劇場から創る劇場へ発想の転換がなされた日本初の小劇場。演劇ソフトの生産工場として良質、個性的な

演劇文化の創造と発信活動を行い、大いなる感動を生み出すための、市民文化の、人づくりまちづkりの活動拠点

とする、というコンセプトのもとに建設された。と運営理念に謳われています。

劇を見るホールは302席。急勾配でどの席からも舞台がよく見えるように作られています。舞台が上演されない時

でも観覧できるホワイエや売店やピアノがあるロビーなどがありますが、ぎりぎり到着でホール以外は何も見られ

なくて残念。

 

地元富良野での上演は1月16日から24日まで。

富良野というひとつの町で昼公演、夜公演合わせて9日間の上演にお客様に来ていただくということは、私たちには

想像もできない努力が必要なのだろう、とはここに来て初めて強く実感させられます。

大崎公演はたった1日。それだけでも小さい会館の少ない客席のチケットを人と顔を会わせる度に「屋根」の紹介を

しつつ鑑賞をお勧めしているのだから。

 

息を詰めるようにして「屋根」を観ました。隣の席のサイトーさんは早くから涙ボロボロの様子。私も我慢しているけど

同様。

この舞台の中で私が生きてきた50年が描かれます。物語の中心は大正末期に結ばれた北海道の貧しい開拓小屋

で暮らす夫婦ですが、その子供の時代を私は生きてきたわけで、まさに20歳代から現在の70歳代まで。

なんと時代は変わり暮らしは変わり、便利を得た代わりに楽な暮らしを得た代わりに、なんとたくさんのものを失って

しまったことかと、舞台を観ながら胸につきつけられる思い。

その時代の全てを見せられるようなこの舞台「屋根」。是非多くの方々に観ていただきたいと思います。

 

今回の富良野訪問には大崎で公演をしていただく際のための小さなお願いがありました。ヨシダさんにお口添えを

してもらってその目的も達成。ロビーで夏の女子会でご一緒したスイちゃんに出会いました。夏には富良野自然塾

で活躍していた横浜育ちで富良野新人のスイちゃんが、今日は[屋根」公演スタッフの一員としてとてもとても元気そ

うな笑顔を見せていて、ここが生き生きとお仕事ができる場であることが解ります。みんな優しいんだね。

 

舞台が終わった後、演劇工場の前で。

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素晴らしい「屋根」でした。来てよかった! 観てよかった!

 

今夜の宿はヨシダさんのお友達が紹介してくださったペンション「あしたや」さん。

いったんくるみ割りまで戻って、「あしたや」のご主人のお迎えワゴン車に乗せてもらい、真っ白い雪に覆われた

丘陵地帯にあるらしい(雪でどこがどこだか分かりません)ワイン工場近くの「あしたや」さんへ移動。

遥か遠くに町が見下ろせるいかにも眺めがよさそうなペンション。ご主人、奥様手作りのいかにもアットホーム

な和洋混合、地元食材、お米も地元の暖かい夕食を頂きました。同宿のお客様は毎年この時期富良野演劇工場

の舞台を観に来られるというご夫婦2組。気のおけない団欒のおしゃべりは夜遅くまで続きました。

ひとつだけ心配なのは、明日以降北海道に到達するらしい大雪を伴う低気圧。私たちは無事に帰れるのか。

 

触れれば音がするようなキンキンと冷たい夜が更けていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

富良野訪問ー2-

富良野滞在2日目の朝。ホテルの窓から見下ろす富良野駅前の光景。

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今朝の気温はマイナス24度だとか。あとでみやこさんのご主人の浦田氏から「今朝、ダイアモンドダストが

きれいでしたねえ。見ましたか」と問われて見なかった私は歯噛みをしました。

知ってれば見たのに~~。

 

ありがたーいホテルの朝食を終えて、「屋根」が始まるお昼までの時間を、ホテルから歩いて5分ほどの

「北の国から資料館」へ。天井が高くて広いこの建物は、他の建物よりはちょっと涼しすぎてコート着用のまま

周らせてもらいます。

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来るのはこれで3回目。来る度にヨノナカの現状に合わせて少しづつ展示が変えられているのが見てとれます。

今は今年初めの大切な一大イベント「屋根」2016冬の公演に向けて。

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今日上演される「屋根」2016冬は「北の国から」とはまったく違う物語りです。 黒板五郎さんのおじいさんの

時代のお話。

私が今住む町岩出山の藩士が戊辰戦争に敗れて生活の術を無くし、北海道の当別の開拓に従事してから50年

後、富良野で9人の子供をもうけて開拓に従事したある夫婦の戦前、戦後が描かれた物語。北海道の中央部に位

置する富良野の開拓は遅かったのだそうです。

 

別の話になりますが、「屋根」の大崎公演の記念事業として、岩出山のあ・ら・伊達な道の駅では、当別開拓の歴史

を描いた版画展と開拓の苦闘を描く映画「大地の侍」の上映会をすることにしました。

主演は往年の大スター、大友柳太郎。そして大友柳太郎は「北の国から」で最後の馬橇を引く笠松の爺さんでも

あります。笠松の爺さんは、大切な馬を手放した後、橋から落ちて亡くなりました。

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ドラマの世界がまるで本当のような黒板五郎の住民票や、東京から来て北海道の原野の中で成長することに

なる五郎の子供、純や蛍の成績表などをじっくり丁寧に見て周り、五郎さんが子供に遺す遺言状まで見終わると、

決まって泣きたくなるのは何故か。

人はこうやって自分の手足を動かして助け合いながら小さな勇気を降り絞って一生懸命に生きるのだ、とこの物語

の登場人物全員から伝わってくるからだ、と今日わかりました。

 

キシキシと音が鳴りそうな雪を踏みしめてホテルへ戻る道すがらの富良野の町。

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富良野に来る度に胸が高鳴る思いで見上げるのは美しい富良野岳。

特に冠雪で白く輝く山々は神々しく感じられます。

 

この低温の中で朝からお庭で雪だるまつくりに余念のないホテルの方。

この作りかけの雪だるまはなーんだ? の問いにヒントを与えられても最後まで「?」だったのは私。

でもこれ、この段階でミッキーマウスってわかります? 私ゃ答えを言われても納得できなかった。

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この雪だるま君、水をつけながら作るのでちょっとやそっとでは壊れないそうです。

 

チェックアウトをした後は、浦田氏に迎えにきて頂いて喫茶くるみ割りに。富良野暮らしのステーションが併設

されている喫茶くるみ割りは、私たちが富良野で何かの行動をする時の拠点です。

昨日が初日の富良野GROUP「屋根」2016冬公演が始まるまで、忙しく公演のお手伝いをされていたみやこさん

の喫茶くるみ割りでは今日は、子供たちのピザ教室が催されていました。子供たちに混じって富良野のバレエの

先生でいらっしゃるマオさんのお顔も見えます。

できあがったピザを食べさせてもらってけれど、これが見事な出来上がり。

子供のピザ作りとか、ドイツ系の靴下編みとか、老人とのお話、英語教室その他その他、くるみ割りに来る度に、

浦田さん ご夫妻を中心とする町づくりの活動の活気に驚かされます。

 

お昼近くになって、早朝札幌をバスで発ったヨシダさんが富良野駅に到着。

ヨシダ、サイトー、と3人揃ったところで、いざ待望の「屋根」鑑賞。

みやこさんに車で送ってもらって富良野演劇工場に向かいます。