昨夜鳴子在住の友人Nさんから久しぶりに電話をもらいました。
ずいぶんご無沙汰で、私もNさん、近頃どうしているかな~と思っていたので、以心伝心。病気したのかな?
終に一人暮しを終わらせて息子さんのところへ引越しの知らせかな?と一瞬思ったのですが、病気は当たってた
けど、引越しではなくて家を売る話でした。
彼女の一人暮しの家のお庭の藤は花の時期、たいそう見事らしくて、何度も何度も「見においで」と誘われた
のだけど、時間が合わなかったり、途中で迷子になって行き着かなかったりで未だいかず終い。
見ないまま売られてしまうのも残念なので、訪ねることにしました。
彼女は私と同じ首都圏から来た移住者で、私は千葉、彼女は埼玉。那邪というアート喫茶をやってたそうです。
ご主人と愛犬2匹とともにこの地に来たのだけれど、ご主人と犬2匹は他界。15年前に私が初めて彼女と会った
時は既にひとりになって、迷い込んできた犬や猫を大切にして一緒に暮らしてました。
大変にお洒落で活動的な女性で、私が出会った時は釜神さまを彫ってました。
釜神さまというのは、この辺りでは普通に民家の台所の鴨居などで見る真っ黒の鬼のような顔を大きな男面。
歳をとって釜神様彫りもしんどくなってきたのか、やめて、それからは週に一度山形県の最上の温水プールまで
通って水泳。それに詩吟に英語にと日々忙しそうでした。ごくたまにばったり道の駅で出会ってお茶などしてました。
が、ついに70代も終わって現在81歳。
病気になったのは仕方がないこととして、これでお終いと面倒みていた犬も死んだので、19年間住んだ家を売って
息子がいる仙台辺りに出ようかと思って。
「ここに最後まで住みたいけれど、一人で死んでたりしたら子供に迷惑かけるでしょう?」
その気持ち私もよくわかる。
お互い、今までの人生で溜め込んだ荷物を片付ける時期なのです。
「よーし、片付けよう。私も手伝うから。もらえるものもらおう」
と出かけて行った彼女の家は素晴らしかった。
道の駅からほぼ15分。10年以上道の駅に通って、道の駅と鳴子温泉の間にこんなところがあるとは知らなかった
けれど、ロケーションとしては昔の開拓の村。時の経過で人が住まない朽ちた家屋も見かけますが、牧場と
牧草地が点在する中に彼女の家はありました。
陽射しを浴びた彼女自慢の藤棚。
藤棚の向こうには広がる牧草地。
400坪はあるお庭には朴や背の高いマロニエなどの木々が枝を伸ばし、花が咲く時期はどんなに美しいだろう
と想像力がかきたてられます。
立派な犬小屋にりっぱな猫小屋。81歳の今、彼女の足になっているのは三菱パジェロ。
ついこの間スピードオーバーで捕まった。「税金10万円だって」
10万だって。どこで何キロ出してたんでしょうね。
頭はしっかりしてます。認知症じゃないからね。
しかし、彼女の家をみて、彼女がお昼にと作ってくれたカレーを食べて、たくさん話して、本当に心から感心しました。
81歳という年齢までこの大きな家で一人で暮して、出会った動物たちの面倒も最後まで看て、水泳をして食べ物
を作って健康に留意し、詩吟や英語を学びながら遊びながら生活のバランスをしっかりと保ち、そしてこれ以上は
「周りに迷惑をかけるからそろそろこのへんで」とこれまでの暮らし方に幕を下ろす彼女の生き方。
家が売れたら、ご飯茶碗と湯のみを持って彼女はここを去るそうです。
そして今ある情熱は、彼女最後の恋であるオペラ歌手の今井俊介氏のオッカケで締めるそうで、[大阪までオッカケ
るのよ~」と張り切ってました。
さて、彼女の家。私がほしいーー。
私がもうちょっと(たくさん)若かったら、蕎麦屋?喫茶レストラン?イギリスにあるようなB&B?
なんでもできるよ、彼女の家では。ああ、想像しただけでわくわくするけど、ダメだ。歳を取りすぎました!