兎と雁

だいぶ前から手拭いを作りたいと考えました。
理由は、いろんな手拭いを見て、いいなあ、素敵だなあ、私も作ってみたいなあ、と思ったのと手拭いって自分の想いを託せるんじゃないかなあ、と思ったのと、でも今の東北は非常事態で、他の可愛い、とか柄が素敵とかの想いよりも、とにかくなんとか前のように品物が売れて、みんな元気になってという気持ちのほうが強いので、その想いが入った手拭いを作りたいなあ、と思ったのと。

初めは東北の復興への願いというなら宮城も福島も岩手も青森もと欲張ったのですが、先立つものがないのでとりあえず宮城のみになりました。
デザインが難しくて、もちろん私はできず、東京とかその他の手拭い屋さんに電話して相談したのだけれど今の手ぬぐい屋さんは忙しいらしくて、即刻断られ(親切なところが1軒ありました)、若い人もいいなあ、と思って千葉大学の学生さんにお願いしました。

その時点で私は手拭いというのはデザインさえできれば手拭いになるのだと思っていた。
でもそうじゃないんですねえ。
デザインの段階でいっぱいやることがあるらしく、私はさっぱりわからないので海山ネットの心強い味方であるそういうことのプロであるKYさんに、学生さんのデザインへの対応をお願いしました。

という経過で全く面識のない歳もうんと離れた、東京と東北の山間の小さな町という距離もうーんと離れたKYさんと学生gongonさんのメールのやりとりが始まりました。
私はc.cでただ二人のやりとりを見てるだけ。

以下gongonさんからデザインが届いた時のKYさんのメール。gongonさんのデザインは「兎と雁」

「うん、良いんじゃないんでしょうか。ちなみに兎と雁のデザインに何か説明や想いがあればお願いします。デザインは「東北復興」のためのデザインであることが必要です。失われたもの、取り戻したいもの、記憶、希望・・・・・。東北・田舎をデザインするというのではない、前に向かって歩いている、再確認できる、そんな想いが必要なんじゃないかと。関東から見た東北への想いでもよいのかもしれません。gongonさんの心にハッと浮かぶ何かがまた出てきましたら、また送っていただけると嬉しいです。ありがとう」

gongonさんからKYさんへのメール

「デザインを見てくださりありがとうございます。ストックに追加していただいて嬉しいです!

作品にこめたメッセージは『宮城の伝統』と『前進』です。
『兎と雁』では雁が丸窓に収まっていて、宮城の伝統や良さが今まで、そしてこれからも続くようにと
いう願いを県鳥に託しました。(私は宮城の県鳥が雁ということも知らなかった)
また兎は1匹だけ丸窓から飛び出していますよね。飛び出し兎に復興へ向けて動き出す被災地のみなさんとそれを支援する人々の姿を重ねました。
宮城には兎やその他の動物がいることを聞き、宮城で見られる生き物をモチーフにしようと考えたことと、被災の年がウサギ年だったことが決め手です。

今回はデザインに携わることができ、嬉しかったです。ありがとうございました。
また絵を描かせてください。今度は切り絵で作りたいと思っています。

私はこの二人のメールの行き来を見ていて、知らない者同士が手を繋ぐとはこういうことではないかと思えます。メールとアイホンとか私のような年齢の者にとっては言葉さえわからない機器に思えますが、まるでそこにいるようにこうしてお話ができ、心を通じ合わせながら物を作る過程を共有できるなんて、これはこれで素晴らしい機械の使い方だと思いました。

これは既にできたデザインでもう手拭いになりかけていますが、いつか必ずgongon手拭いもここに入ってほしい、と思ってます。

 

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