許可できません

        海の手山の手メンバーは4人。年齢層はいろいろ、男女で構成しています。みん

     な海の人、山の人がどうやったら経済復興できるかを一生懸命考えるので、イベ

     ント目白押しです。菊植え(4000本)、蓬茶つくり、竹盆栽つくり(竹の切り出しか

     ら苔採りまでやります)、残り布での小物つくり、全部山の手メンバーの元々の家

     業ではなく、南三陸からの避難者の手を借りて、共に作り出そうと始めたもので

     す。梅見の会から始まって短い間にあまりにもいろいろなことが起こったので、

     311の震災からずいぶん時間が経ったような気がします。

     企画を立てるたびに、家業以外のことでわからないことも多く、いろいろな

     方にいろいろな形でお世話になりました。おしなべて言えることは、どこに行って

     も被災者、非被災者の区別なく、支援をするよ、という前向きな心が感じられ、

     その都度感動しました。こんなことやってもらえないだろう、とダメ元でお願いし、

     叶えられた時は、嬉しいけどビックリの方が大きかった、ということもあります。

     でも今回とてもがっかりする出来事がありました。

     避難者の方の中には介護などで避難所から自由に出られない方もおられます。

     その方たちにエコバッグを作ってもらったらどうだろう、と山の手メンバーの一人

     が考えました。その旨避難所に伝えに行くと、みなさんに大変喜ばれました。

     手を動かしながらおしゃべりができるのです。旅館のお部屋だけの生活に

     少しだけ風が通れば気持ちが楽になるかもしれません。楽しい時間を持つこ

     とは何より必要です。

     もう一人の若いメンバーが考えました。ただ作ってもらうより、一枚いくらかで

     もお金を払ったほうが作る人に張りがでるんじゃないか。私たちの目標はどん

     なに小さくとも経済復興の第一歩を歩み出すこと。じゃあ私たちが買い取りま

     しょうかと。買い取ったらいくらでも使い道があります。竹盆栽を買ってくれた

     お客様に差し上げてもいいし。そうしたらそのエコバッグの材料をあげようと

     いう方もすぐに現れました。

     あと、やることはエコバッグを考案なさった方にその旨お伝えして、ご了解を

     得ることです。電話をしてみました。すると驚いたことに「許可できません!」

     「自分の教室で勉強した人しか許可できません。長年の経験上、そのバッグが

     どんなにいい加減なものか見ないでもわかります!」

     と言われては、何のお話をなさっているのでしょうか。

     驚きました。ご自分が長年苦労して研鑽されてきた技術が、何もかも失ってどん

     なふうに希望をもったらよいのかさえ解らなくなっている、それでも介護などで

     不自由に暮らされている被災者の方々に喜んでもらえ、希望の光になるの

     なら、こんな嬉しいことはない、と私なら苦労のしがいがあったと喜ぶところで

     すが、「許可できません」というのは理解の範疇を超えます。同年代として。

     参考にさせていただいたお教室の代わりの本は、雑誌社にお返ししようと思い

     ます。

     早春の寒空の中、自然災害に完膚なきまでに痛めつけられた東北の人々は

     老いも若きも男も女も助け合って日々を過ごしています。喜んでエコバッグを

     作ってくれていた避難所の方になんといおうかと今考えています。

     「許可できません」

     東北では聞けない遠い他所の国の言葉のように聞こえます。

                                       山の手S記

     

 

    

    

     

     

     

     

   

 

       

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