外からの眼、内からの眼

あんまり寒いので、昨日、今日はほとんど出ないで家ごもっています。

15日、鳴子で東大大学院教授のロバートキャンベル先生の講演があったので聴きに行ってきました。

題して「湯治文化ビジネス創造プロジェクト」。キャンベル先生の講演と外から鳴子に来た方2名と鳴子温泉の

若主人1名のパネルディスカッションの2部構成。

先生の講演の内容は、主題どおりで湯治という鳴子にしかないお湯の文化を活かして大崎全体の生き方を

考える。その中心にあるのは「ゆたかさとは何か」

 

キャンベル先生にお会いするのは久しぶりです。

大震災直後、先生が自ら発案されて、鳴子温泉で二次避難中だった沿岸部の方々に「読もう」という文学講座

を開かれた時に、図々しくも私は文学講座が目的ではなく、始まったばかりの海山の復興に向けたスローガン

のような言葉を翻訳していただきたくて、先生にお目にかかりに行ったのでした。

その時私は先生についての知識が何もなくて、翻訳をお願いした後、先生の講座に参加させていただき、

その時に先生が教材として選ばれた本。テーマは「音」で幸田文、川口松太郎ともう一人(名を忘れた)の作家

の作品にある音を読み解く講座でした。アメリカ人なのにその選ばれた本、そしてその解釈に私は驚愕してしまい、

それから講座に通うことにしたのでした。

 

テレビを見ないのでテレビの中の先生については知らないのですが、ほんとうに心細やかな優しいお人柄で

私たちが足を崩しても1時間でも2時間でも正座を崩されない先生の長い足が印象に残っています。

 

翻訳については先生も驚かれたのでしょう。「あなた厚かましいですねえ!」と仰りながらも講座が終った後、

電車の時間を気にしながら、今見ると赤面するようなスローガン的言葉を翻訳してくださいました。

その後数回の講座の後、病気をされて講座は中断されました。

切羽詰まった状況であったとはいえ、東大大学院の著名な教授でいらっしゃる先生のところに突如現われて

翻訳をお願いし、「あなた厚かましいですねえ!」と言わしめるような人間は後にも先にも私くらいだろう、と

今は穴があったら入りたい心境。本当に厚かましい。でも願いに応えてくださった先生に感謝しています。

 

で、講座の内容。

印象に残った2点。

ひとつは外からの目と内からの目。

アメリカ人の先生は日本に於いても外から来た人で鳴子でも東京という外から来た人。

私も同じ、外から鳴子や岩出山、大崎を見る人ですが、「岩出山の有備館と温泉がある鳴子はとても近い。

すぐ近所に見える」という先生の言葉に共感しました。

 

岩出山と鳴子。鳴子には温泉があるけれど、どちらも四季の彩が美しい静かな小さな町でお隣同士。

車で走っても30分とかからない。だから余所者の目から見ると鳴子も岩出山も同じ地域に見えるのですが、

実際にはこのふたつの町は、ここに住む人たちにとってはとても遠い町らしい。

というのが、ここに15年住んでも、なんでだろう、と謎でした。

湯治文化ビジネスは湯治だけでは成り立ちにくい。そこに周辺に点在する歴史や伝統の文化などなど、様々な

ものが縒り合わされて、大崎の大きな魅力になると思うのだけれど、そこはそこ、という現状。

「とても近い」というキャンベル先生の言葉でなにかが始まるかもしれません。楽しみです。

 

それともうひとつは、

世界に今広がりつつある「排他主義」。

それとは逆の思想が日本のこの地方の小さな町に潜在しているようだ。

大変大きな話ですが、という前置きをしたうえでの先生のお言葉が私の心にスッポリと納まりました。

都会で暮らしている時には持てなかった人を受け入れる余裕が、この土地の人々と暮すようになって持てるように

なっているような。その辺りに答えがあるのではないか・・・。

 

有意義な講座でした。

次の機会を楽しみに待ちます。