私の庭、私の家

今度の富良野再訪は、10月11日にあ・ら・伊達な道の駅で開催予定の海山マーケット用新聞バッグ入りラベンダー

の仕入れの話、及びラベンダー研究会、そして来春の「屋根」公演に向けての情報収集などが目的でした。

が、合宿宿泊は1日だけにして、2日目3日目は前から憧れていた吉田さんの山小屋に泊めて頂くことにしました。

吉田さんの山小屋があるのは富良野から車で1時間ほどの南富良野。

野外学校があったり、カーリングの練習場があったりの自然いっぱいの町です。

 

元富良野塾生と吉田さんご夫婦が力を合わせて建てたという山小屋は原生林の中にありました。

小屋の横を流れる川では、声をあげてパドルを動かす黄色い救命胴衣の子供たちが乗ったラフティングボートが

が流れ下り、小さな蝦夷リスが樹を駆け登る素晴らしい環境。

倉本ドラマ「優しい時間」に使われた小屋だそうです。

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ここでの2日間はこの小屋から出発。林の中の道をドッコンドッコン揺られながら国道に出、そこから吉田さんが

紹介してくださる方のところへあっちに行ったりこっちに行ったり。

 

最初に連れて行って頂いたのが「私の庭」でした。庭の作り主は坂井さん。今は南富良野でラベンダー刈りのお仕

事をなさっている67歳の男性。会話の終わりにアッハッハ、アッハッハと笑い声をくっつけて話される楽しい

方です。

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「私の庭」という看板。

核心を衝くネーミングでまず目を奪われますが、それにもまして目を奪われるのがるのがこの見事に刈り込まれた

広大な芝生。それも西洋芝ではなくて日本芝。ここまで広がるってずいぶん年数がかかるはず。

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これは凄いです。ここまで刈り込むって相当念入りに手入れしなきゃこうはならない。

見渡せば、周りには誰もいません。人っ子一人影も見えない。庭沿いを走る真っ直ぐの道路には1台の

車の往来もなく・・・・。じゃあ誰がこの庭見るんだろう。人、いないよ。

 

「誰も見なくていいんですって。村の人はなにやってんだ、と見向きもしてくれないけどいいんですって。自分で

作って自分が嬉しいお庭なんですって!」との、吉田さんの説明。

 

凄いじゃないですか! 誰も見ない、誰も誉めない庭をこれほど見事に楽しげに作り上げる坂井さんの美意識と

根気と世界観に感服。私はほんとに驚いた。そんな人これまで会ったことない。

坂井さんのお庭ワールドには植物だけではなく、動物も音楽も神様も人も共生しています。

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お庭で放牧された手作りの牛たちと、庭の隅に置かれたクラシックビールのカンカンで作ったグランドピアノ。

だいぶ前に作ったのだけれど、冬の雪が来る時には壊して仕舞ってまた作るので、大変。そろそろやめて

壊そうかと思っている、と坂井さん。もったいなーい。

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お庭の真ん中辺りに作られた小屋のデッキには椅子やテーブルとともにCDプレーヤーが置かれていて、スイッチを

ONにするとドラマ「優しい時間」のテーマ曲が流れ始めます。

見る人も聴く人も全然いないところで聴く音楽は、ぜーんぶ私のもんだよーという満足感がじわじわと。

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お庭から出たところの森の中にも新しく作ったという教会と小屋がありました。

大草原の小さな家と書かれています。うちの娘が大好きだったテレビドラマ、大草原の小さな家の中からインガルス

一家の父さん、母さん、メアリーやローラが出てきそう。

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敬虔なクリスチャンであるインガルス一家が日曜日に通う教会の窓はステンドグラスで作られています。

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十字架! 椅子!ホンモノみたい。

こういうものを作るのは冬雪が降る間の手仕事で、次にはこの教会の周りをターシャさんの庭のように花で埋めた

い。あれだけの花を咲かせるには時間がかかるので、今から取り掛からねばならない。やりたいことがいっぱい

あって忙しいんだ、と言いながら坂井さんはアッハッハ!といかにも楽しそう。

 

お庭を見た後は「私の家」に招待して頂きました。

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この家はご家族と一緒に暮らす家とは別の、坂井さんだけの「私の家」

光栄にも私たちは入れて頂いて、坂井さん独自のお部屋でご自慢の音楽を聴かせて頂くことになりました。

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小さな音楽ルームには久しく見なかった蓄音機やレコードなど坂井さんの宝物がどっさり。ご自分で修理した

古い蓄音機、たくさんのレコード、大好きなコーヒー、そしてウイスキー。暖炉もあります。

久しぶに荷蓄音機でかけるレコードで青江三奈や五輪真弓の唄などじっくり聞かせて頂き、ずいぶん研究して作り

上げたという美味しいイモモチをお土産にもらってお暇しました。

 

誰にも関係なく自分だけで完結した自分だけの世界を楽しむことができる坂井さん。

羨ましいです。こういうふうに生きられるようになりたい。お友達になれてよかった、また来年行こう。と思っていたら、

なんと今日お手紙を頂きました。

そしてなんと、坂井さんは以前に新聞バッグを50個も作ったことがあるんですって。今思い出したって。

 

こんなところで新聞バッグが出てくるなんて、ほんとびっくり。

こうやって人は出会ってゆくんだなあ、と不思議なご縁を嬉しく思います。