迷ったら進みなさい。あきらめないで!

時々孫のピアノのレッスンについていきます。

クーちゃん先生は私のお友達です。孫がまだ3歳にもならない頃、先生と私の共通の友人であるケイコさん

が週2回開くレストランに行った時に、「孫に何かを習わせたい」という話になりました。ケイコさんは絵の先

生であり、造形作家であり、エッセイストであり、ピアノもバイオリンもよくする方です。「4歳になったら連れて

いくよ」という約束をしたのですが、その時既にガンを患っていたケイコさんは間もなく亡くなりました。

4歳になった時に私はケイコさんとの約束どおり、クーちゃん先生のところに孫を連れて行きました。

戦中戦後育ちの私はピアノなんぞはやったことがありません。習ったのはソロバンくらい。

こんな小さい子にピアノを教えるなんてできるのかしら、と実は半信半疑でした。 私としてはべつにピアノの

演奏家になってほしいわけではないのです。ただ楽譜がよめて楽器が弾けれ ば、人生においての楽しみ

が増えるんじゃないかなあ、と思ったことと、学校の時にはホルンを吹いていた 私の3人の子供らは、大人

になっても音楽好きであること。もうひとつ、今私が住んでいる家は山の中にあ り、他所の人と出会う機会

は作らなければありません。つまり社会との接点がないということで、それじゃあ まずいだろうと。そんな理

由で通うことにしました。 たったひとつの約束ごとは、休まないこと! 続けること!

嫌がるかなあ、と思ったけれど、全然嫌がらない。どうも好きみたい。 ということで、以来2年、相変わらず週

に1度通い続けています。

凄いなあ、と思うのはピアノのピの字も知らなかった孫が楽譜を読み、両手で弾けるようになったこと。

これは孫がどうとかいうことではなく、ひたすら先生の指導のお陰です。 付き添う私は、孫がピアノを弾く

間、大抵の時はすぐに眠たくなって夢うつつ。なのですが、先生が 時には厳しく時には優しく孫に発する言

葉は耳に入ってきます。 ご挨拶は?から始まって、「うん」じゃないでしょ? 「はい」でしょ。「適当にお返事し

ちゃダメでしょ。ちゃんと 考えてからお返事してください」等々、ピアノだけではなく言葉使いも態度も指導し

てくれています。 そんな中でこの間は印象的な言葉がありました。

孫が迷って自信をなくして指が止まりそうになる時。 「止めちゃダメ。止まっちゃダメ。諦めないで。迷ったら

進みなさい。あきらめないで!」

指のひと弾きごとに、「できた」「できた」「ほーら、できた」「できた」「ほーら全部できたでしょ!諦めなかった

らできるんだよ!」 「えらかったねえ!凄かったねえ!ハイ、好きなシールあげるよー!」

孫は嬉しくて一人でできたような気になって、張り切って大好きなシールをもらいに行きます。

DSCF1852                      「止めちゃダメ。迷ったら進みなさい。諦めないで!」といつもいつも言われていたら、その言葉は身体に 沁

みこんで、自分の言葉になっていくんだろうなあ、と考えていました。

孫は先生が大好きです。 ピアノの後で少しだけ時間が重なるRちゃんと並んで声を出すレッスン。

最初の頃は恥ずかしくて小さな声しか出なかったけれど、今では大きな声で歌うようになりました。

Rちゃんも先生が大好き。 「大きくなったら先生みたいな人になりたい」とお手紙をもらって、先生は感激して

ました。  クーちゃん先生はピアノだけではなく、大切なことをたくさん教えてくださる先生です。

良い先生にめぐり会いました。感謝です。