腕を磨く

以前に夫からこんな話を聞いたことがあります。

夫がコンピューターの会社でシステムエンジニアになりたての頃。
SEとしてある大手の金属などを精錬、加工する工場をコンピューター化する仕事を任せられました。
その頃のコンピューターは、全て1台何千万もする大型コンピューターで、壊れたりすると、営業、SE、CE(カスタマーエンジニア)総動員で大騒動でした。事務所も寝ないで直るのを待つ、ような感じでした。

で、これまで人の手で動かしてきた工場をコンピューター化するというのはどうしたらいいのか。夫は夜も
眠れぬほど考えたそうです。何千万もする機械を買ってもらって、「がんばったけど、出来ませんでした」という訳には
いきませんので。

人の手による金属加工は、それまでは熟練の工員さんたちの目や感によって支えられてきた。その目や感をどう
プログラミングしたらいいものか。自分だけで考えても埒があかず、工員さんたちも一緒になって試行錯誤し、
火花に目をつけたそうです。火花がいくつ出るか、どんな形で出るか。火花がいくつ出た時、機械は、金属は    どうなるんだ? こうなるんだ、というのをひとつひとつ検証、していった。

「その頃の工場で働く人のカンや目は凄かった。腕の見せどころというんだろうが、コンピューター化されたら、腕利きも、腕を磨く、も腕の見せどころもなくなってしまったなあ。人じゃなくてコンピューターがやるんだもの」
コンピューター化するために必死で働き検証していた本人が、今、そう述懐しています。

 

世の中を便利にして、人が持つ6感を疎かにしてきたようなもんだね。私がそう言うと昔だったら「日本の経済の発展」だとかなんとか目を三角にしていた夫が「そうだなあ!と納得するようです。

 

今日はうちの花の見せどころ。出荷して花壇の植え込みです。
花苗は誰が作っても同じように見えるでしょうが、作った人によって全然違います。道の駅の花壇用の花苗の出荷者は4人。同じ種類の花でも誰が作ったのか、すぐに分かります。

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11年前に私が植えたサントリナの間に植えこまれます。

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花を作ることも新聞バッグを作ることも同じように、自分の頭と感覚をしっかり使って、新しく良いものを作って
いきたい。そして今田舎に住んで思うままにできるってことは、幸せなことだと思います。