広がる、広がる

       別荘をお借りすることになった陶芸のK先生が、わざわざ船橋からいらして

       くださった。

       梅農場のメンバーを除いて、代表、事務局、メンバーそろってご挨拶に行く。

       本当に今日は蒸し暑くて、先生に申し訳ないようだ。

       活動の割にはたいした売上げもないumiyamanetなので、最初の頃は荷物も

       さほど無かったのだが、全国の皆様のご支援で送っていただいている布や

       ミシンや新聞バッグなどでだいぶ荷物の容量が増えてきた。

       合わせて、いろいろな場面で協力してくださるお客様の来訪も多い。ミーティン

       グも度々しなければならないし、購入した干し椎茸を計って小袋に入れたり、

       販売準備をする場所も必要だ。みたいなことを無意識的にぼんやり考えてい

       るところに、市川コルトンプラザに来てくださったことから、降って湧いたように

       突然先生の別荘を利用させていただいてのumiyamanet事務所開設の話が

       決まったのだった。よっちゃん農場夫人の「ありがたい。ほんとにありがたい」

       の言葉どおり、私もとてもありがたい。家はきれいだし、景色もいいし、竹の子

       も柿の実もすずらんもいっぱいある。採らなくてもあるだけで豊かな気持ちにな

       る。もうひとつ、ありがたいのは、これまで思いつかなかった新しい考えを、先

       生から聞けることだ。

       そのひとつ。レース編みのペットボトルカバー。明日写真を撮ります。これは

       可愛い。

       その2、新聞バッグ販売のアドバイス。umiyamanet立ち位置のアドバイス。

       その3、英語の翻訳をしてくれる方が見つかった。先生が紹介してくださるそう

       だ。こうしてちょっとのことから人と人の繋がりが広がって行く。一人一人の

       想いが形を成してゆく。umiyamanetの活動は忙しく、きついことも多いが、この

       広がる、広がるがumiyamanetの醍醐味なんだろうなあ、と思う。

          

       

日本の宝もの

              温度が高いうえに間々で雨が降るので、至るところがものすごい草。竹盆栽

      に使う苗も草に埋もれて見えなくなるので、昨日、今日と草取りに精を出したら

      案の定腰が痛くなった。取っているときは腰痛のことなど忘れていて、夜になっ

      て、ああ、そうだった、と思い出すので始末が悪い。

       及川さんより電話があり、新聞バッグに使ってほしい新聞があるので見てくだ

      さいとのこと、間をぬけて古川へ行く。

      「使ってください」と喫茶店のテーブルの上に置かれた一締めの新聞の束を

      見て呆然!

      英字新聞、日本の各新聞、農業新聞に子供新聞にスポーツ紙、全部まっさら。

      手付かずで及川さんは読んでいない。及川さんが選ばれたのだろう。311以来

      の悲惨な記事や写真ではなく、人が救われたり笑顔があったり、自衛隊や米軍

      が活躍する姿が撮られた感動的な素晴らしい写真が数々ある。一見しただけで

      3月からの様々な場面が思い出されて思わず涙が出てきた。でもこんな新聞を

      新聞バッグには使えない。絶対に使えない。

      「私の宝物です。役に立つのだから使ってください」

      強行におっしゃる及川さんの言葉に負けて新聞をお預かりした。

      津波に流された南三陸新聞社の記者の及川さん。津波に襲われる南三陸の

      町を撮られた写真の力強さといい、仮設住宅に入られた時には疲れて元気

      が失くされていたが、それでもこれだけの新聞をきちんと保管されている

      及川さんの新聞記者魂。

      新聞は及川さんの宝だけではなく、日本の宝だと思います。新聞バッグに

      作り、パネルにもして、後々日本中の人たちに見せる機会ができたら、及川

      さん、どれほど喜ばれることだろう。

      大切にお預かりします。ありがとうございました。及川さん。

      

      

      

      

     

      

      「ダメですよ。こんな新聞いただけません。及川さん、読んでないじゃないですか」

      「読んでないです。いつかゆっくりと読もうと思っていました。私の宝物です」